リーマンなどには『史上最強の軍隊は絶えざる訓練と精神の強化によってのみ実現する』と説いていたが、実際は兵士の『素質』に、鍛錬による強化以上に着目していた。ペールゼンは『死なない兵士』による部隊を夢見る。さらに彼は『遺伝的に生存を保証された兵士たちの組織』こそが、真のレッドショルダーと語っている。
そのきっかけは、若かりし頃に参加した作戦で遭遇した『宇宙空間に放り出されても生き延びていた、緑色の泡に包まれた赤子(もしくは胎児)』であった。そのことで『いかなる技術も管理も、優れた人的素材には敵わない』ことに思い至った彼は、ある『純学問的な生命研究所』が研究していた『
異能生存体』を知ることになる。
ペールゼンは、軍事利用を恐れて被験体とともに隠れた研究者たちを七年にわたり探し、レッドショルダーの前駆である『赤い右肩のスコープドッグにより構成された部隊』で研究者の隠れていたサンサの研究施設を襲撃、『異能生存体』と思しき人間の子供を火炎放射器で焼く。なお、ペールゼンの命により焼かれた子供は、数年後外見上無傷で生存していることが確認されている。
彼は、ギルガメス軍に入隊した、あの日炎で焼いた子供、
キリコ・キュービィーをレッドショルダーに組み入れる。
キリコは『死なない兵士』を地でゆく特異さを見せる。それは「異能生存体」たるものを誰よりも理解しているペールゼンにとって(いや、理解しているからこそなのかもしれないが)、御しきれない、危険なものに映った。
彼は軍事裁判を回避し政治犯医療収容所から脱出した後、秘密結社にて人造の異能生存体たる
パーフェクトソルジャーの誕生に荷担する。ペールゼンとPS計画の関連性については、
ペールゼン・ファイルズでペールゼンの指示によりザキに施された洗脳が、PSの『レクチャー』の原型である可能性が提示されている。また
ノベライズ版?ではもっと直接的に、ギルガメスPSの開発がメルキア軍時代のペールゼンの発想によるものとアロンにより語られている。
ペールゼンは人工の異能たるPSによってキリコの抹殺を図ったが、それをなし得ることはなかった。PSですら、「無意識にでも必然的な奇跡を起こす」異能生存体と比べると「卓越した能力を持つためにただ単純に生存確率が高くなる『だけ』」の存在だったのかもしれない。
なお、彼は以前より、ギルガメス軍の全兵士のデータから生存確率が特異的に高い兵士を探し出していた。その集大成たる『ペールゼンファイル』は、レッドショルダー解散後それを入手した情報省次官
ウォッカム?を野心に駆り立てた。しかしそれは彼の運命を致命的なまでに狂わせ、どころか
モナド?攻略戦に参加した一億二千万以上のギルガメス軍将兵の命をも巻き込み、穏当な終戦へ向かいつつあったアストラギウス銀河を大きく揺るがすこととなった。
ペールゼンによると、ファイルにて生存確率の異様に高い兵士として選ばれた者は、異能生存体と比べると『近似値に過ぎない』という。
実際、ペールゼンファイルに従い選ばれた「
バーコフ分隊?」のメンバーのうち、「異能生存体」であるキリコ以外は、ことごとく
モナド?攻略戦にて無残に戦死(もしくは自死)している。
「状況に応じ環境を変動させ、ほぼ必然に近い確率で奇跡を起こす」異能生存体と、「奇跡的に生き残る可能性が高い『だけ』」の近似値との間には、見掛け以上に大きな隔たりがあったということだろうか。
見方によっては、ペールゼンもまた、異能生存体により運命を狂わされた人物の一人、とも言えるのかもしれない。