ボトムズ用語を独断と偏見と妄想で語るWiki - 異能生存体

概要

異能生存体とは、生命体の中にごく低確率で現れる「不死」の個体のことである。人間においては遺伝確率250億分の1*1かそれ以上の希さで発生するとされる。異能生存体の名付け親であり、異能生存体を調査し続けていたペールゼンによると、「遺伝的に生存を保証された」存在。

異能生存体はしばしば「生存確率が異常なほど高い個体」として観測されるが、異能生存体において「生存確率の高さ」は条件ではなく「不死であることによる必然的な結果」でしかない。
異能生存体と「生存確率が異様に高い『だけ』」の個体とは表面上区別がつきにくいものの、「生存確率が異様に高い『だけ』」の個体が運や処世術などなどで生き残る(=不運や失敗によって死ぬことがある)のに対し、異能生存体は生存のために環境を改変するなどして、確実に生き残る。
その環境の改変は、本人の能力や意思とは関わりなく行われる。「生き残ろうとして低い確率の中生き残る」のではなく「どう思うかに関わらず、結果として確実に生き残る」のが、異能生存体なのである。

異能生存体は基本的に不死ではあるものの、肉体的には短時間のあいだ死亡する(もしくはそれに近い状態に陥る)ことがある。しかし最終的には永続的な死が回避され、蘇生してしまう。また、異能生存体とされた個体には、治癒能力が異常なまでに高いという特徴もある。

このように異能生存体は特殊な存在ではあるが、反面その精神は常人と変わることはない。常人では死に至るほどの損傷を負いつつ異能の因子により生き長らえた場合でも、精神にはそのときの「心の傷」が深く刻めこまれることがある。

アストラギウス銀河の人類においてはキリコ・キュービィーが異能生存体にあたる。

異能生存体の発見

ペールゼンによると、「低確率でしか生まれない、極めて特殊な遺伝子を持つ『殺すことのできない』個体」。

この、生命の法則に反するような「殺すことのできない」個体を発見したのは、ある「純学問的な生命研究所」であるという。最初に発見されたのは、如何なる致命的な損害を与えても死滅しない菌類であった。

数百〜数兆分の一という極めて低確率ながら発生した「殺すことのできない」生命体の発見を受けて、研究者らは他の高度な生命体…特に人類に、同様の個体が存在しないかを追求し始める。軍事利用を恐れて研究者らは自らと「殺すことのできない」個体の候補を隠匿し、研究を続けていた。

しかし、彼らはギルガメス軍のある軍人により突き止められてしまう。その軍人こそが、後にレッドショルダーを創設するペールゼンであった。
ペールゼンはサンサ?の研究所を襲撃し、候補者と思しき少年を炎で焼いてしまう。しかしその少年は、数年後メルキアで火傷の痕跡もなく健在であることが確認された。
言うまでもないが、その少年こそがキリコ・キュービィーである。

異能生存体の本質

前述したが、異能生存体の条件にして本質とは、「自らの生存のために(観察者を含む)環境を改変する」能力である。

野望のルーツ」でのキリコの描写を例にとると、
  • キリコに向け至近距離から拳銃を撃つと、キリコを避けるように有り得ない位置に着弾
  • 同じく至近距離からマシンガンを撃とうとすると故障
  • 暴動時カースン?と共に逃亡したキリコが追いつめられたところで不在だったペールゼンが基地に戻り制止される
  • キリコに密着して心臓めがけて撃たれた弾丸が心臓を僅かに逸れる。結果一度長時間の心停止に陥るものの蘇生

以上のような、物理法則や因果律に介入しなければ生じないような事態が、キリコに対して発生している。

しかしキリコはその奇跡の如き現象を、自らの意思で引き起こしているわけではない。

もちろんキリコも非常時においては「生き残りたい」という意思のもと行動しているのであろうが、並の人間でもたいていの非常時の行動は同じく「生き残りたい」という意思に基づいているのは変わりがない。

そもそも異能生存体の場合、「生き残りたい」という意思を持とうと持たなかろうと、時に意図しない「環境への干渉」により生存が実現されることがあるのだ。

ペールゼン・ファイルズのラストシーンでは、一人生き残ってしまったキリコが、「近似値」でしかなかったバーコフ分隊の仲間のように、自分も永い眠りにつければ…という、異能生存体の持つ運命への呪いにも似た祈りを心に抱いている。

異能生存体であるということは、本質的には幸福をもたらすわけではない。生存確率が高いにもかかわらず、生き残ることが幸運というより不運に見えてしまう場面のほうが多い。

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異能生存体をめぐって

ペールゼンの「野望の原点」

ここまで何度かペールゼンの名前が出たとおり、ペールゼンは自らが「異能生存体」と名付けた「殺すことのできない人間」に対して、ただならぬ執着を見せていた。
ペールゼンは、ギルガメス軍?では群を抜く練度を誇る戦闘集団「レッドショルダー」の創設者、最高責任者である。しかしペールゼンが夢想していた「真のレッドショルダー」とは、キリコのような「殺すことのできない」兵士により構成された部隊であった。

野望のルーツにおいて、ペールゼンは「(異能生存体たる)キリコと同質の個体を量産することは今の科学をもってすれば可能」と語っている。それを証明しようとするかのように、ペールゼンは秘密結社?に合流し、パーフェクトソルジャーイプシロン?の誕生に荷担している。なお、ノベライズ版?ではギルガメスのPS開発がペールゼンの発想を元にしていると言及されている。その発想が「異能生存体の量産」であったのかは定かではないが、ペールゼンが異能生存体・キリコをPSを以て抹殺しようとしていたのを考えると、ペールゼンがPSを異能生存体に相当するものとしたかったのではないかと感じられる。
しかし、PSは人工の異能生存体になり得なかった。初のPS・プロトワンは素体としての誕生前の段階で、こともあろうに異能生存体・キリコと出会ってしまい、その運命は大きく変わった。ペールゼン自らが誕生にかかわったイプシロン?は、キリコに敗北し、命を落とすこととなった。

ウォッカムの「野心の終点」

ペールゼンは、レッドショルダー隊員に「共喰い」をはじめとした過酷な選別・訓練を課していた。それは生存確率の高い兵士をより分ける(異能生存体候補を探す)ためだったとも言われているが、実際はレッドショルダーに飽きたらず、ギルガメス軍の全兵士(傭兵含む)の中から、特異的に生存確率の高い兵士を探し求めていた。長年の調査結果は膨大なデータ量に膨れ上がり、ホログラムシートへ幾枚かに分けて記録された。これこそが、後世でもいわく付きで語られる通称「ペールゼン・ファイル」である。
ペールゼン・ファイルに記録された調査結果は、ギルガメス軍の中にたった四人(実質は三人)だけ、キリコに相当するかそれ以上に生存確率が高い者が存在することを示していた。

彼の野望を詰め込んだはずのペールゼン・ファイルだが、なぜか彼の元から手放されることになった。しかもペールゼンの逮捕より以前のことである。オドンの基地司令・リーマン?にファイルの破棄を命じたのだ。
だが、リーマンによりファイルが破棄されることはなかった。

リーマンが保管し、サンサでの戦死時にも彼の懐にあったペールゼン・ファイルは、後に情報省次官・ウォッカム?の手に渡った。膨大なデータの断片から、彼はキリコ・キュービィーという青年の謎、そして彼と同様生存確率が異常なまでに高い兵士のデータを得て、野心を抱く。

ペールゼン・ファイルの放つ毒に浮かされたように、ウォッカムは無謀な「実験」を始める。手始めに、惑星ロウムスで敢行された作戦にキリコを含む大量の軍勢を、ただの囮として差し向けた。一人の男の生存確率の高さを証明するためだけの「負荷実験」としては破格の無謀さであったが、キリコは見事に(だが瀕死で)生き残る。

次にウォッカムは、ペールゼン・ファイルに記された異様なほど生存確率が高い兵士四人とキリコを、最前線の惑星ガレアデにて引き合わせた。

結成されたばかりのバーコフ分隊?は、技量が伴わないにも関わらず、危険な任務に借り出され、危機的な状況の中全員が生き残る(とともに、作戦失敗による多大な犠牲をもたらす)。

その後、友軍から分隊員が襲撃されたことを端に発した反乱騒動では、PRLタンクの爆破によって抹殺されかけるも生き残り、その後転属させられた極地では極低温の寒気団の中を分隊員のスキルを使って生き延びるに至る。

ウォッカムは分隊の驚異的な「実績」を見守ると同時に、軍事裁判にかけられていたペールゼンの身柄を確保し、ペールゼン・ファイルの真意、真実を得るため、自白装置や薬物を用いた苛酷な尋問(拷問)を続けた。そしてペールゼンに死をもたしかねないほどの尋問を通じて、ウォッカムは異能生存体の概念を知るが、異能生存体に対する彼の理解は表面的であった。

ペールゼンは「キリコ以外は近似値に過ぎない」と語るが、ウォッカムは「近似値で十分」と答えた。ウォッカムにとって、異能生存体とは「ひたすら生存確率が高い」存在であり、それを利用すれば「どのような状況でも確実に任務を果たしうる不死の兵士」が作れると画策していたのではなかろうか。

この一連の負荷実験とペールゼンへの尋問を経て、ウォッカムは「異能生存体」を自らの野心を叶える道具としてこの上なく使えると判断。百年戦争?の終結を前に、バララント支配下にある重要拠点・惑星モナド?の奪還作戦を動議。可決とほぼ時を同じくしてバーコフ分隊を情報省直属部隊「ISS」に組み入れ、分隊を核とした一億二千万の将兵にて要塞化したモナドを攻略する作戦を敢行する。

だが、モナドはバーコフ分隊による中枢の占拠後に異常変動を生じ、一億二千万の将兵を巻き込み爆発、作戦は銀河史に残る、「殺戮」とすら言える甚大すぎる犠牲ともに失敗する。

作戦失敗後、ウォッカムは部下の一人がペールゼンにより潜りこまされた者であると知る。死をもたらすはずの自白装置の連続使用や投薬は全て部下によりコントロールされており、あまつさえバーコフ分隊の一人が彼により洗脳を施されていたことまで明らかにされた。

ウォッカムの無謀な実験により、「異能生存体はキリコのみで、バーコフ分隊の他のメンバーは近似値でしかない」というペールゼンの見立ては実証されることとなった。

ペールゼンと彼の半生をかけて調査された「異能生存体」を自らの野心の道具としたはずのウォッカムは、実際はペールゼンの掌で踊らされていたに過ぎず、異能生存体・キリコの起こす奇跡にすら翻弄されていたのだ。

ペールゼンは、異能生存体の本質を理解していたからこそ、ペールゼン・ファイルを破棄したのであろう。
異能生存体の本質…「どのような状況でも環境に干渉し確実に生き残る」こと、それは、軍事行動において「いかなる任務も不死の能力で遂行する」ものではなく、「参加した任務をことごとく破綻させてまでも生き残る」という残酷な特性を発揮する。




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「異能生存体」と「異能者」についての考察

異能生存体に非常によく似た、かつキリコ・キュービィーを表す言葉のひとつに「異能者」がある。
TV版の時点では、異能者とは文明の発達に伴って現れる「新人類」「生まれながらのPS」のような存在とされている。これは低確率で現れる不死の存在「異能生存体」とは別の概念であるようにも見える。
ただ、「ペールゼン・ファイルズ」においては、「異能者」という言葉はしばしば「異能生存体」を表す言葉としても使われている。
「生まれながらのPSであろうが死なない人間だろうが異能であることに変わりはない」から、というのが安易かつ妥当な推察だが、TV版、特にクエント編?終盤を振り返ると、「キリコが神の座を継ぐ異能者としてワイズマン?から目を付けられていた結果、異能生存体とされた」という可能性が持ち上がってくる。

TV版第48話?で、ロッチナが「ワイズマンにその命を保証されている」*2旨を語っている。
また、TV版52話?では、キリコに抹殺されつつあるワイズマン自身が「戦場で生死をさまよっていたキリコの無意識下に操作を施した」「フィアナとの出会いを運命づけた」と語っており、ワイズマンはキリコの人生に対して積極的に干渉していたことが明らかにされている。
このことを踏まえると、異能者と異能生存体が各個に独立した概念ではなく、ワイズマンが後継たるキリコを育成する過程で環境に干渉していたことがキリコの生存率の異様な高さとして観測され、「異能生存体」の概念を生み出した、とも考えられる。

その場合、異能生存体の概念の元となった「死なない菌類」の発生の理由が宙に浮くように思えるが、「死なない菌類」は異能者・キリコの登場を告げるためにワイズマンが仕掛けたある種の「受胎告知」、と考えることもできる。
死なない菌類を発生させ(もしくはある菌類の環境に干渉し死なない状況を作り出し)、高度な生物にも死なない個体が生じる可能性を示すことで、後に生まれる異能者・キリコを庇護させる、もしくはワイズマンの後継者として育成するに足る環境に誘導する、という目論見が想像できる。
(ワイズマンがもっと干渉すればそのような回りくどい方法をとらなくてもいいようにも思うが、ワイズマンの環境干渉能力が限定されていたためにそのような方法をとって誘導してゆく方法をとらざるを得なかった、という可能性が考えられる)